「未来のミライ」 細田監督の集大成、ここにあり!

※ネタバレを含みます。これから観る方はご注意ください。

 

 あらすじ

くんちゃんの前に現れたのは未来から来た妹のみらいちゃん!?

ここからくんちゃんの冒険が始まる!

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演出・ストーリーについて

演出は群を抜いてすごい、さいっこう‼

街並みの描写から家にぐ~っとよってからのOPに入る。これだけで引き込まれるんです!そしてOPが終わると最初の街並みのその向こうまで描写される。これだけでも思わず「きれい」と言いたくなるような作画だった。

風景描写だけでなく、細かい動作にもこの素晴らしさは現れていた。例えば、クンちゃんが犬になって家を駆けまわったり、お父さんが近所のママさんたちに褒められているときの赤ちゃんの細かな動きなど。

ただこれが最初からずっとなんだからどうしようもない。そう、どうしようもなくすごすぎて、それが当たり前であるかのように感じさせてしまう。それほどまでに抜群の演出。

一方、脚本は細田作品を見るたびに感じるがほとんどない、というより今回は全くない。ストーリーに整合性がないのなら、いっそなくしてしまえばいい。リズと青い鳥も同様のやり方だ。

同じような作品にもかかわらず、ミライは長く感じ、リズは感じなかった。これはなぜだろう?

一つの考えとして、リズでは機微な心の動きを描き、ミライは行動、体の動きを描いたからではないかと思う。心を巧みに演出すると観客は引き込まれ、次にどう変化するのかどう行動を起こすのか考えたり、想像したりするので比較的短く感じる。一方、動的なものは考えるわけではなく起こるものなので観客は入り込むというより、俯瞰的にみている。その結果、ストーリーがないと、終わった後に「で、結局何だったの?」となるわけだ。

キャラ・声優について

主人公はクンちゃんであるが、時折かわいらしいが、なかなかむかつく。急に自分に妹ができ、親の意識はそっちばかりにいってしまい、まったくかまってもらえなくなるので、泣きわめいたり、モノをまき散らしてお母さんを悩ませる。また妹を「好きくない」ものとして捉え、いたずらをしたり、たたいたりする。4歳児なのだからわからなくはない。ではなぜ観ていてイライラするのか。やっぱね、リアルすぎるんだよね。

そして上白石萌歌さん、うん、まあ頑張ったよね。個人的に予告を観た時から違和感ありありで大丈夫かなって思ってたけど何とかなっていた。そりゃ18歳の子が4歳の男の子の声をあてるんだから無理はないよね。

あとね毎回思うのが細田作品を俳優がやるのは無理がある。なんてったって細田作品はリアルっぽさはあるもののアニメ的な表現とか動きが多いんだからね。

あ、でもね、ひいじいちゃんだったかな、福山雅治がやってるんだけどめっちゃかっこよくて福山節炸裂って感じだったな。

集大成としての意味とこれから

時かけではタイムリープサマーウォーズでは“家族のつながり”、おおかみこどもでは“親子(母子)”バケモノの子では、両親がいなくなった九太にとって熊徹は父のような存在であったので“親子(父子)”

これらすべてが未来のミライにつまっている!

また動物に変身したり、動物が人のように表現されていたりするのも集大成といえる。

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似たような描写。バケモノの子の木と未来のミライの庭の樫の木との関係は?

その一方、魚といっしょに泳いでいるのは新しい試みだろう。すごくきれいだった…

また、ブリキのおもちゃのような駅員と今走っている電車に近未来チックな新幹線。

過去、現在、未来が入り混じったあの東京駅は過去作の集大成として今描いたこの作品をミライへつないでいくってことなのかもしれない。

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「ではなくしたものは自分自身というわけですね?」 この言い方は痺れた!

感じる違和感

第一に家複雑すぎない?建築家のお父さんだからしょうがないのかもねって言ってたけど遊び場に行くのに雨降ってたら濡れるし、第一、まだちっちゃい子供と住む家なのにバリアフリーじゃないし、描きたいもの詰めましたって感じ。

第二に、「女の子だから着せがいがあるわ~」とか「女の子だからひな人形飾る」とか、“女の子っぽい、男の子っぽい”をなくそうとしてる現代の風潮に逆行してるというか現在ではまだ残ってる風習だからやっぱりリアル重視なんだよね。

第三に、家を改装してから植えたはずの樫の木が過去から未来までをつなぐものになっているという不思議

結局、描きたいのが多すぎてそういうところの回収ができないってのもわからなくはないんだが…

見どころ

大人が忘れてしまった子供のころの気持ちや無限に広がる世界だね。

悪いことと気づいても後に引けないからエスカレートしちゃう、でもほんとは謝りたい。自転車に乗ろうとするけど転んでいたくて、いやになっちゃう。でもできたら何ともない。「なんだおれってすごいじゃん」って気持ちになる。

そんな子供のころを思い出させてくれるいい映画。

また、これは子育てをした頃を思い出させるものでもあるのだ。

怒らないって決めたのに疲れててイライラしちゃった、とか

それだけではない、劇中で何回も使われる「何事にも初めてはある」それを思い出させてくれる映画なのだ。

悪いところを言ってきたがこれだけで十分いい映画だ、といえるのだ!

 

まとめ

いろいろと言ってきたが、細田作品集大成としてみるもよし、粗にツッコむのもよし、どんな見方をしても面白い映画だと思います。

あ、あと山下達郎の歌もね。OPとEDがある作品はいい作品ってそれ一番言われてるから(笑)